食中毒を出し、厚労省のサイトに公表されたマフィンの画像。上が537個販売されたスイートポテトマフィン、下が502個販売された栗マフィン
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 食中毒は人の命を奪いうる。11月、イベントで販売されたマフィンによって発生した食中毒について、厚生労働省はリコール対象事案として公表、健康への危険性が最も高い「CLASSⅠ」に認定した。

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 食中毒を出したマフィンを販売した菓子店は、「防腐剤、添加物不使用」「市販の焼き菓子の半分以下の砂糖の量」が売りだった。SNSで情報が広まるにつれ、「5日間ずっと製造しないと間に合わない」「保管場所は18°C以下を保っておりましたが、外気温が高かったため何個か傷んでしまった可能性がございます」といった投稿も注目されることになった。

 何がいけなかったのか。

 HACCP(ハサップ)コーディネーターでもある「若宮ヘルシークッキングスタジオ」の若宮寿子さん(栄養士・フードコーディネーター)は、こう指摘する。

「ヘルシー志向と衛生管理はまったく別問題です。常備菜を冷蔵庫で保存した場合ですら、3日以内に食べきるのが目安。食品衛生について知識があれば、(5日前に製造というのは)まったく考えられない」

 HACCPとは、原料の仕入れから、製造、出荷までのすべての工程で、食中毒などの健康被害を引き起こす可能性のある危害要因を科学的根拠に基づき管理する方法のこと。HACCPに沿った衛生管理は、2021年6月から原則としてすべての食品関連事業者で完全義務化されているという。

食中毒は知らないと防げない

  だが、「一般社団法人 日本食中毒防止協会」専務理事の中島考治さんは、「全国チェーンならいざしらず、個人店はほとんどやっていないのでは」と問題視する。

「食中毒は知らないと防げない。今回の件について、『防腐効果のある砂糖が少なかったことや、無添加も関係しているのでは』という声もあるようですが、そういう問題ではありません。有機物の中では、添加物が入っていようと砂糖がたくさんであろうと、増殖条件を満たせば、食中毒菌はどんどん増殖します」

 食中毒対策をするうえで重要なのは「温度」と「保存期間」だという。

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加熱しても死滅しない菌がある