英国在住の作家・コラムニスト、ブレイディみかこさんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、生活者の視点から切り込みます。
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中東情勢に注目が集まる今、英国内で粛々と続いているものがある。英政府の新型コロナウイルス対策に関する独立調査委員会だ。当コラムでその公聴会について「しつこい」と7月に書いたが、あれからもコロナ禍当時の閣僚や官僚が続々と呼び出され、責任を追及されている。
先日、元内閣副官房長のヘレン・マクナマラが、女性官僚が「突如として目に見えない存在にされた」という当時の首相官邸のムードについて暴露した。会議では、彼女が何か喋っていても割り込まれたり、無視されたりしたという。そのために、ロックダウン中のDV被害者への対策や、医療関係者用の個人防護具のサイズが女性には大きすぎる懸念、妊婦のケアや出産時の不必要な制限のルールなど、特定の課題が見過ごされたと主張した。子どもの学校の保護者たちとSNSで繋がっていた彼女は、政府と一般の人々のずれを感じていたという。
会議のテーブルにつくのが男性ばかりになれば、女性の視点が含まれなくなり、見過ごされる問題が増える。女性の意見が重要なのは、男性と女性の脳が違うからではなく、経験に基づく「気づき」が違うからだ。