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作家・演出家の鴻上尚史氏が、あなたのお悩みにおこたえします! 夫婦、家族、職場、学校、恋愛、友人、親戚、社会人サークル、孤独……。皆さまのお悩みをぜひ、ご投稿ください(https://publications.asahi.com/kokami/)。採用された方には、本連載にて鴻上尚史氏が心底真剣に、そしてポジティブにおこたえします

「力関係があったり、楽しくないのに楽しいふり」する関係なら、友達なんかいらないと思うのはじつにまっとうな感覚だと思います。

 僕には、ぜんぜん、ひねくれてるとは感じません。強いて言うなら、「笑」の文字を使うことがもったいないぐらいです。すぎちゃんの現状は、「笑」ではなく、じつに自然なことだと思います。

 さて、とても聡明なすぎちゃんなのですから、25歳の時点で35歳とか45歳のことを心配してもしょうがない、というのは簡単に想像できると思います。

「未来の自分のために、今の自分を犠牲にしてでも、結婚に向け頑張るなり、友達増やすなりをした方が良いのでしょうか」と書かれていますが、自分というものをしっかりと持っているすぎちゃんが、「今の自分を犠牲」にできますか? きっと「なんでそんなことをしないといけないんだ!」と耐えきれなくなると思います。

 やがて、一人に飽きたら、ゆっくりと他人に向かって手を伸ばしていけばいいのです。好きな人ができて、その人に向かって、自分を売り込みたいと思えば、そうすればいいのです。好きな人が現れなければ、不特定多数に向かって、自分を商品にすることはない。興味のない人と無理に友達になる必要もない。それだけのことだと僕は思いますよ。

 ひとつアドバイスをするとすれば――すぎちゃんの考えを、うまく表現する方法があるといいと思います。「恋愛市場に並ぶ商品になりたくない」とか「楽しくないのに楽しいふりをする友人関係は嫌だ」という言葉に激しく納得する人は間違いなくいます。そういう人が、やがて、友達になれる可能性のある人です。すぎちゃんが、自然に、自分の思いを語れて、相手も自然に受け止めた時に、「ああ、友達かもしんない」と思えるのです。

 そのためには、「ひねくれてる」とは思わず、これが「自分の哲学」だと思うことです。すぎちゃんの生き方ですからね。SNSで小さくつぶやくとか、人に聞かれたら、「笑」なしで自然に答える、なんてのがいいと思います。

 すぎちゃんは、ひねくれているんじゃなくて、自分にとても正直なのです。それはとても大切なことです。

「人間関係のしがらみがなく、自由に暮らせていることに、ただならぬ幸せを感じて」いる今を、うんと充実させることをお勧めします。はい。

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鴻上尚史

鴻上尚史

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/作家・演出家。1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は、「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に脚本、演出を手掛ける。近著に『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる 』(岩波ジュニア新書)、『ドン・キホーテ走る』(論創社)、また本連載を書籍にした『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』がある。Twitter(@KOKAMIShoji)も随時更新中

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