「これまでで一番大変だった」と担当者が振り返るのが、小学校の給食で出ていた牛乳の銘柄の調査だ。2022年に実施し、6千件以上集まった回答をもとに「みんなの声で作った小学校の給食牛乳マップ」を作成した。
「小学校で飲んでいた牛乳の種類を社内で聞いてみると、いくつも出てきたんです。はじめは都道府県単位かと思っていたら、県内でも複数の銘柄があり、なかには市町村でも違っていた。なので、当初の想定よりもだいぶカオスな地図になりましたね(笑)」
牛乳の画像もそれぞれ使用許可を取り、地図に盛り込んだ。大手のメーカーもあれば、家族経営の会社もあった。なかにはすでに廃業しているところもあった。
「『画像を送りたいけどやり方がわからないからFAXでもいい?』という方もいて、『そこを何とか電子データでください…』と交渉したりしました(笑)」
苦労の甲斐あって反響は大きく、酪農・乳業の業界団体「Jミルク」のイベントや、雪印メグミルクの工場見学で紹介されるなどしたという。
地図を読む文化が広まれば
地図の作成にあたっては、Xに寄せられた回答を担当者が一つひとつ確認し、集計している。「ちくわぶ地図」は1300以上の回答をもとに作成したが、コメントの中には条件に合わないものもあったので、実際の数はそれ以上になったという。
それほどの労力をかけて、なぜこのような企画を続けているのか。
「普段から地図を読んでもらいたい、というのが根本にあります」
と担当者は話す。
「目的地を目指しているときや災害時などでないと、地図を読む機会はなかなかない。私たちが地図を読むネタを提供することで、平時から地図を読む文化が広まってくれれば、という気持ちでやっています」
遊び心があふれる企画には、地図への愛がいっぱいだった。
(AERA dot.編集部・唐澤俊介)