槇原敬之さん

 そして、僕が入ってから3ヶ月後、槇原さんが新曲をリリースした。日本テレビ「子供が寝たあとで」というドラマの主題歌。この曲が「もう恋なんてしない」だった。

 僕は一応スタッフだったので、ラジオで初めてかける前に、スタジオでこの曲を聴いた時のことを覚えている。

 イントロが始まり、一気に胸が高揚する。そしてサビを聞き終わり「めちゃくちゃいい曲じゃないっすか」と大きな声を出した。発売するとあっという間に100万枚を超えての大大大ヒット。槇原さんはこの曲のヒットにより、一気に「一発屋疑惑」からめちゃくちゃ才能のある大ヒット歌手になったのだ。

 この曲が大ヒットしたあたりから、本人はまったく変わらなかったけど、周りの環境は変わっていった。僕はこの業界に入り、すぐに3歳年上のお兄さん的な人が、猛スピードでスターに駆け上がっていくのを見て、「夢あるな~」と思った。

 あのスタジオで最初に「もう恋なんてしない」を聴いた時から30年以上が経ち、また流行る。その理由は、単純にこの曲が「名曲過ぎる」からだろう。

 今、世の中のヒットは「より共感性が高いもの」になっている気がする。30年の時を経て、またこの曲の歌詞が共感されるとは。いや、ずっとずっと共感されていたんだろう。

 いいものはずっといいのだと証明してくれて嬉しい。そして槇原敬之さんは、怪物だ。

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