作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、スポーツ用品店で遭遇した男性店員の接客と、「カスハラ」「モラハラ」について。
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「カスハラ」について、NHKが朝の番組で特集を組んでいた。
客が店員に対して理不尽な要求をしたり、高圧的な態度を取ったりする「カスタマーハラスメント」が、接客業に就く人たちを苦しめているという。スーパーのレジで「オレは経営者だ!お前みたいなのは絶対に雇わない」と突然切れ始める男性がいたり、「手伝います」と高齢女性に声をかけたところ、「急かされている」と勘違いした女性がカートをがんがん販売員にぶつけてくるとか……。そういったカスハラによって追いつめられ、接客業を辞める人も少なくないという。
薬局やスーパー、介護施設や病院などで働くエッセンシャルワーカーの多くは女性であることも、カスハラを助長させている要因だろう。叱責してもいい、何を言ってもいいと女性を軽くみるような社会で、カスハラの本質は基本的には性差別であり、職業差別である。
実際、私も30年近く小売業をしてきているけれど、「男を出せ」と電話口で男性客に言われたことは、一度や二度じゃない。怒鳴られたり、不当な要求に何時間も時間を奪われるようなことにも苦しめられてきた。今はほぼメール対応になり、また電話であっても「録音している」というアナウンスをすることで、だいぶカスハラは減った。それでも週に1度はスタッフが対応に苦慮している。たとえこちらに非があったとしても、尊厳を奪われるようなつらい時間になることが多いからだ。
とはいえ、NHKの番組によれば、「カスハラをしたことがある」という人は、男性では半数、女性でも4割もいるという。自分自身では正当なクレームと思っていても、受け取る側からすればハラスメントになるかもしれない……のだとハラハラした。というのも、私、おかしいな、と思うと、考える前に口から自然に言葉が出てしまう系の女だからである。
もちろん、自分では理不尽な要求をしている意識はない。
何年か前のことだが、パンケーキ屋で、びっくりするほどしょっぱいパンケーキが出てきたことがあった(塩パンケーキを頼んだのではなく、フツーに甘いパンケーキを頼んだ)。