
日テレ旧本社跡地を含む二番町の計画地はそもそも都の再開発等促進区に該当する。区地域まちづくり課の担当者は、「都の促進区の運用基準に沿って進めていきたい」と強調する。運用基準の容積率は770%。日テレの計画は建物高の制限を90メートルにしても容積率は700%の提案だ。
広場や歩道の確保、地下鉄からのバリアフリー化など課題対応に関しても、容積率が「抑え気味の700%の提案は妥当」(区担当者)とする。
■武家地であり文人が住んだ地
一方、守る会は高さ制限60メートルでも建築面積を広げて課題解決が可能と主張。建物高が90メートルから60メートルと低くなると、確保できる広場も2500平方メートルから2200平方メートルと狭くなるが、広さとしては問題ないとする。
区側は守る会の「広場や歩道を狭めても高さ制限の現状を維持すべきだ」という意見があることを踏まえた上で、住民アンケートでの結果などから「意見は拮抗している」としている。
日テレや関連企業、関係者を顧客とする地元商店街の人たちが多い二番町の町会は開発計画に賛成と伝えられていたが、ここへきてほころびも見え始めている。
二番町にあるグロービス経営大学院の堀義人学長が3月16日、二番町の町会で意見を述べる機会を奪われたなどとして東京地裁に民事訴訟を起こした。堀学長は守る会の共同代表だ。
守る会の関係者は、「2年前に策定した都市計画マスタープランは、区が2年をかけてつくった都市計画の憲法です。そこから日テレ所有地のみを切り離し、開発促進型の地区計画に変更している。教育施設、業務・商業施設が調和した住宅街と言えるのか」と語気を強める。
守る会の高さ60メートルを維持する提案について、日テレ社長室広報部は本誌の取材に「建築基準法に抵触するなど提案として成立していない」「区も確認済み」としている。
番町は江戸時代では武家地であり、近代では多くの文人が居を構えた地。
守る会は「自分の住む町について学び、語り、そして意見や気持ちを少しでも行政に届けたい」と訴えている。
住民の意見をていねいに聞き、合意形成に積極的に関わる姿勢が区に問われている。(本誌・浅井秀樹)
※週刊朝日 2023年4月7日号