
日本テレビ放送網が都心の広大な所有地で、千代田区を巻き込み、大規模再開発を進め、高さ制限緩和の見直しを求める住民と火花を散らしている。何が起きているのか。
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皇居に近い東京都千代田区二番町の日テレの旧本社跡地で、再開発をめぐり地元住民から反対運動が起こっている。
1.5ヘクタールの広大なこの跡地は一部にテレビ塔とスタジオ施設がつくられているが、問題となっているのは、現在駐車場などとなっている残りの1ヘクタールだ。
日テレは高層ビルを建設する予定で、千代田区は建物高の制限60メートルを90メートルに緩和する方針だが、地元住民で組織する「番町の町並みを守る会」は、町の風格や雰囲気も壊すなどとして、この高さ制限の緩和に反対している。
守る会の顧問は榊原定征経団連名誉会長や田中信明元国連事務次長、福田博元最高裁判事、人間国宝で歌舞伎俳優の中村東蔵氏、ノーベル化学賞受賞者の野依良治氏、岡村勲元日弁連副会長など多士済々の顔ぶれで、さながら“セレブの乱”の様相を呈している。
開発計画をめぐるこうした問題は珍しくないが、気になるのは、区による住民への説明が不十分で、さらに日テレ側からの実質的な「巨額の寄付」が区の規制緩和方針に影響したのではないかという声が上がっている点だ。
「区はもう少していねいに進めるべきだ。住民への情報開示も十分ではない」と同区の小林孝也区議は指摘する。たとえば区が昨年7月に開いた住民説明会では、参加者全員に対して賛否の意見表明ができる形での開催が通常なのに対して、来場者に個別説明し、個別に意見を聞くだけだった。さらに、区が公表する開発計画の資料では高さ制限緩和に関する箇所が一見しただけではわかりにくく、見過ごされやすかったという。
こうした説明不足に加えて、守る会が問題視しているのが、日テレの区側への「巨額の寄付」だという。
日テレは先述した旧本社跡地のほか、隣接する四番町の所有地も含めた再開発を視野に入れているとされる。ここはもともと別の企業や番町教会があった場所で、現在は更地になっている。