私たち悠翔会は、私たちにしかできない方法で目の前の患者さんを幸せにすることを存在意義としています。その理念さえ共有できれば、それを具体的にどのように実践するかは現場の先生方にお任せしています。ですから、24のクリニックはそれぞれに違った個性と強みを持っています。

医療法人社団悠翔会理事長・診療部長の佐々木淳医師 写真/上田泰世(写真映像部)

 例えば、「うちの地域はがん患者さんが多いけれど在宅で診られる先生が少ない。では、うちはがんに特化しよう」とか「この地域は医療的ケア児のニーズが満たされていない。じゃあ子どもも診よう」「この地域は経済的に困窮している人が多く、一人暮らしの人や精神的な疾患を抱えている人もいるようだ。ソーシャルワーカーを置いて、精神科の診療もがっちりできる体制を作ろう」など、クリニックごとに拠点のリーダーが、地域に応じた診療サービスを自らの裁量で作っていけるようなシステムにしています。理事長というと私が経営しているように見えるかもしれませんが、実際には私と24人の院長、歯科や精神科など各部門のリーダーが、それぞれの優れた知恵や経験を共有しながら共同運営しているという感じです。

医師の質を評価する診療満足度調査を実施

長尾 医師を採用するときには、どのような点を重視しているのですか?

佐々木 医師としてのキャリアや専門性より、仲間として信頼して仕事を任せ合えるかを重視しています。私自身もほぼ未経験からのスタートでしたし、経験が少なくても、医師として学び続けたいという謙虚さがあれば活躍が期待できそうな気がします。一方で、努力で獲得するのが難しいかもしれないと考えているものがコミュニケーション能力です。在宅医療においては、患者さんと話をすること自体が治療手段になることもあるほど、対話が大事だと考えています。そのため、面接では主に、コミュニケーション能力と、悠翔会の理念・価値観を共有できるか、学び続ける謙虚さがあるか、という3点をみていますね。

長尾 実は、医師にはコミュニケーションが苦手という人も多いように思うのですが、医師やスタッフの研修や、仕事を評価する制度などはあるのですか?

佐々木 コミュニケーションスキルをアップするための研修などはおこなっていませんが、医師に対する評価システムはあります。在宅医療の質の評価には、「医学的な評価」と「患者満足度の評価」という2つの基軸があると思っています。医学的評価とは、患者さんを急変させない、入院させないために医学的な治療・管理ができているかという指標で、コロナ前のデータではありますが、悠翔会では救急搬送を3分の1に減らし、入院日数を1人当たり平均30日減らしたという実績があります。

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救急医療を崩壊から守る実績を作った