太陽劇団(テアトル・デュ・ソレイユ)の22年ぶりとなる来日公演のポスター(筆者撮影)

 諍いが起こり、テーマは重くとも、セリフは明るく、しかも強烈だった。忖度などどこにもない。資本家の企てるカジノを、反対派が「文化的チェルノブイリ」と言い放った時は客席から笑いと拍手が起きた。

 舞台で西洋人がごく自然に盆踊りに興じている。空間が変わり砂漠の夜、ランプを手にラクダの背に乗る男が出てきたかと思うと、そこここで黒子が拍子木を打ち、演者がジャズを踊るシーンもある。夜桜が咲き、バックステップには噴火寸前の火山。観客の方もインバウンド、劇団同様多国籍で、舞台と客席双方にいろんな言語が交わされる祝祭的空間が現出した。

 終演後、拍手は鳴りやまず、カーテンコールのラストではアリアーヌ・ムヌーシュキンが私たちに何度も手を振った。

 1939年生まれの彼女は俳優を「私の子どもたち」と呼ぶ。彼女のモチベーションのもとにあるのは「愛」。20を超える国々から俳優が参加する太陽劇団にはフランスに逃れてきた難民も含まれているという。

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延江浩

延江浩

延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー、作家。小説現代新人賞、アジア太平洋放送連合賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞、放送文化基金最優秀賞、毎日芸術賞など受賞。新刊「J」(幻冬舎)が好評発売中

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