転移している可能性のあるリンパ節を切除することで、がんがどこまで進行しているか確認すること、そしてリンパ節に転移があった場合に周囲のリンパ管にがんを取り残さないことを目的としてリンパ節郭清をおこないます。

「例えば、肺がんではⅠ期で2センチ以下の小さいがんでも、がんのタイプによっては15~20%がリンパ節に転移しているというデータもあります。がんが大きくなるほど転移のリスクは高くなるので、がんがどのぐらい進行しているかを確認するために、肺がんでは手術を受けられる人は、がんの切除とあわせてリンパ節郭清をするのが標準治療となっています」(坪井医師)

 がんの手術ではおこなわれることが多いリンパ節郭清ですが、リンパ節を切除することにより、合併症が起こることもあります。切除するリンパ節の位置によって症状は異なり、乳がん、子宮がん、卵巣がん、前立腺がんでは、リンパ節郭清によりリンパ液の流れが滞ることで、「リンパ浮腫」と呼ばれるむくみが生じることがあります。肺がんでは、一部のリンパ節の近くにある反回神経に触れることで神経のまひが起こり、声のかすれや食べたものが気管に入る誤嚥(ごえん)が起こりやすくなることもあります。

 リンパ浮腫が生じた場合は、スキンケアやマッサージ、弾性ストッキングなどによる圧迫療法、運動療法などの治療をおこないます。

「早期に適切な治療をおこなうことで、症状の改善を図ることができます。リンパ浮腫は進行すると治りにくくなってしまうので、できるだけ早く見つけ、治療することが大切です」(若尾医師)

(取材・文 出村真理子)