キーワード【5年生存率】

がんと診断された人が、5年後に生存している割合。がんのできる部位ごとに示され、治りやすさを表す指標として用いられる。あくまでも指標の一つであり、単純に「余命」と結びつけて考えないことが肝要。

 多くのがんでは、診断から5年間(手術の場合は術後3年間)が最も再発が多く、5年を過ぎると再発する可能性が減っていきます。ただ、5年を過ぎれば絶対に再発しないというわけではありません。また、がんの種類や病期により、もう少し長く経過をみる必要があるものもあり、10年生存率のデータもあります。

 生存率には、「実測生存率」「相対生存率」「ネット・サバイバル」などの種類があり、算出のしかたが異なります。また、5年生存率や10年生存率のほかに、診断から一定の年数が経過して生存している人の、その後の生存率を示す「サバイバー生存率」というデータも出てきています。

 国立がん研究センターの報告では、2014~15年にがんと診断された人(全がん)の5年生存率は66.2%でした(ネット・サバイバルによる院内がん登録2014-2015年5年生存率集計、447施設約94万2717例)。ただ、がんの種類や病期によって、5年生存率は大きく異なります。坪井医師は、患者から生存率を聞かれたとき、こう話すといいます。

「この数値はあくまでも確率で、あなたが良いほうに入るか、悪いほうに入るかは誰にもわかりません。それに、早期がんで治療により完全に治った人でも、明日、災害や事故で亡くなることがあるかもしれない。数字はあくまでも数字で、先のことは本当にわからないですから、あまり気にしすぎないようにしたいですね」

キーワード【リンパ節郭清(かくせい)】

がん細胞は、リンパ液の流れに乗って全身に広がり、転移する。そのため、手術でがんを切除するときに、転移している可能性があるリンパ節も切除することをいう。再発予防や、リンパ節への転移の有無を診断する目的でおこなう。

 医師からがんの手術についての説明を受けているときに、「がんの切除とあわせてリンパ節郭清をおこないます」と言われても、「郭清」という耳慣れない言葉に、すぐ理解できないこともあるかもしれません。リンパ節郭清とは、がんの近くにあるリンパ節と周りのリンパ管を含む脂肪を切除することですが、なぜ、がんと一緒にリンパ節を切除することが必要なのでしょうか。

 私たちの体内では、血液が流れる血管と同じように、リンパ液が流れるリンパ管が体中に張り巡らされています。リンパ管の途中にはリンパ節という組織があり、からだを守るための免疫機能を担っています。リンパ液は、血管から出てリンパ管に吸収された水分で、リンパ液に侵入したウイルスや細菌、がん細胞などの異物は、リンパ節で退治・処理されるしくみになっています。がん細胞は、リンパ液の流れに乗って全身に広がりますが、リンパ節はがん細胞がその先に行かないように食い止めてくれるのです。

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がんが大きくなるほど転移のリスクは高くなる