「パートナーに先立たれて元気がなくなる」のは男性だけ?
本庄教授によると、日本人女性が長寿であると考えられる理由には、比較的教育水準が高く、健康行動が良く、肥満者の割合が極めて小さいことなどが挙げられる。特に男女差がみられる健康行動が喫煙と飲酒だ。
「日本は他国に比べて女性の喫煙率が比較的低く、男性の3分の1程度です。また、健康に害を及ぼすほどの飲酒をする人の割合も男性と比較して低い傾向がみられます」
また、高齢者のメンタルヘルスにも男女差が生じやすい特徴がある。女性は若いときから友人や地域住民、子どもの親同士など多様な人間関係を形成する機会が多く、人との社会的つながりを持つことが比較的得意だ。一方、男性は職場での時間が長いため地域参加の機会に恵まれず、地域の人との交流を難しく感じる人が多い傾向にある。そのため定年退職後の人間関係は妻だけになってしまい、妻に先立たれた夫は孤独・孤立に陥りやすい。
本庄教授によると、これは日本独自の傾向かもしれないという。
「海外の研究では、配偶者を失うことは男女ともに健康へのリスクとなります。しかし、日本では男女に顕著な違いがみられることがよくあります。たとえば、高齢者の一人暮らしは健康に良くないと言われていますが、その影響がみられるのは男性に限られるようです」
独居高齢者と家族と暮らす高齢者の幸福度を比較すると、独居になって男性は幸福度が下がるのに比べて女性は上がる傾向にあることが2021年の中央大学の研究でわかった。背景には、新たな人間関係の形成能力に加えて、家事負担からの解放があると推察される。
「これまでの研究によると、高齢男性の一人暮らしは精神健康を悪くする要因の一つである可能性がみられますが、女性ではその影響はみられません。また、夫と死別した高齢者の死亡リスクは、死別しなかった人より低いという研究結果もみられます。海外の研究者からみると本当に不思議みたいですね」