“病院嫌い”が寿命に影響する?

 WHOは2019年のリポートで、裕福な国で女性が男性よりも平均寿命が長い理由を「衛生・保健に対する観念が男女で違う」「同じ病気に罹患したとき、男性は女性より医師の診察を受けて薬を服用する割合が低い」などと指摘している。

 本庄教授はこの点について「男性は性別役割分業規範の影響もあって仕事中心の生活を送る人が多く、どうしても時間的に職場に長く拘束されてしまい、病院に行くのを後回しにしてしまう傾向があるのではないかと考えられます」と話す。

 一方、女性は育児や介護など人をケアする役割を求められてきた。「だからこそ自分自身の体調に注意を払い、不調に対応し、困ったら誰かに相談するという習慣を持つ人が男性に比べて多いのかもしれません」と本庄教授は言う。

以上、

  • 生物学的性差(ホルモンの影響など)
  • 教育歴が高い
  • 健康行動が良い
  • 肥満が少ない
  • 求められる性別役割分業規範の差

 これらを踏まえても、日本人女性が世界一の長寿である理由や、男女で平均寿命に差がある理由を説明するには十分ではないようだ。

 生活習慣や人間関係だけではなく、これまでの成育環境や所得、職業、社会関係など、さまざまな要因が健康格差を生んでいる。コロナ禍を経てかつてないほど人々の健康志向が高まる今、その背景に目を向けてみると新たな発見がありそうだ。

(文/酒井理恵)

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