出典:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021

 湿疹が体幹や手足とともに、顔や首にあらわれやすいのも、大人の特徴です。

「炎症がひどくなるとかゆみもより強くなるので、かきむしって、皮膚が傷つき、さらに炎症がひどくなるという悪循環に陥ります。治りにくい紅斑(こうはん)や痒疹結節(ようしんけっせつ・かゆみの強い硬いしこり)、苔癬化(たいせんか・象の肌のようなゴワゴワとした皮膚)が起こるとステロイド外用薬だけでは治りません」(矢上医師)

 アトピー性皮膚炎診療ガイドライン作成委員である広島大学病院皮膚科教授の田中暁生医師は、「大人になって、突然、悪化した場合、あるいはステロイド外用薬を塗っているのによくならない場合はアトピー性皮膚炎以外の病気の可能性もあります」と話します。

「学業や仕事でなかなか受診ができない人も多いと思いますが、治療が遅れてしまうと、病状が悪化してしまいます。悪化した皮膚の見た目を気にして、家に閉じこもり気味になる患者さんもいらっしゃいます」と矢上医師は言います。

「近年、厚生労働省は企業に対し、アトピー性皮膚炎を含むさまざまな慢性疾患を持つ従業員の、治療と就労を両立する支援の取り組みを始めています。こうした後押しもありますので、必要なときは会社を休み、医療機関を受診して、時間に余裕を持つ中で、外用薬の塗布をしっかりおこなうなど、ご自身の皮膚と向き合う時間を作るといいでしょう」(矢上医師)

「民間療法」にエビデンスはない

 アトピー性皮膚炎については、いわゆる「民間療法」に関する情報も多数出回っています。インターネットで調べると、「糖質制限」「温泉療法」などさまざまです。

 矢上医師も田中医師も、「アトピー性皮膚炎はよくなったり、悪化したりを繰り返します。何かの民間療法を始めたタイミングとアトピー性皮膚炎がよくなるタイミングがたまたま一致するということもあり得るでしょう。民間療法が効くというエビデンスはありません。からだに害のない療法であれば否定はしません。ただし、アトピー性皮膚炎の医療機関での治療は継続してほしい」と話します。

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「脱ステロイド」はアトピー性皮膚炎を急速に悪化させる