※写真はイメージです(写真/Getty Images)

大人のアトピー性皮膚炎は、学校や仕事などがある中で治療をしなければならない点がやっかいです。どのように病気と付き合っていけばいいのでしょうか。民間療法とはどう付き合えばいいのでしょうか? 専門の医師に聞きました。この記事は、週刊朝日ムック「手術数でわかるいい病院」編集チームが取材する連載企画「名医に聞く 病気の予防と治し方」からお届けします。「アトピー性皮膚炎」全3回の2回目です。

【図表】年代別のアトピー性皮膚炎の有病率はこちら 20代10.2%・・・

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「息子が仕事に就けなくて……。今はいいけれど、親が年をとってリタイアした後はどうするの?って聞いたら、『お金を稼げないから、一緒に住み続けたい』って言うんです」

 藤田医科大学ばんたね病院総合アレルギー科にやってきた60代の女性、松岡美紀さん(仮名)は涙ながらに話を始めました。傍らにいるのは息子の健二さん(仮名・25歳)。アトピー性皮膚炎がかなり悪化している状態です。病気の発症は乳児のとき。自宅近くの皮膚科で治療を受け、いったんはよくなりましたが、高校生になると湿疹が再びあらわれました。

 やがて全身に広がり、かゆみで夜も眠れなくなってきました。気を紛らわせるためにネットゲームに夢中になるうち、昼夜逆転になって不登校気味に。高校はなんとか卒業できたものの、その後、気力がなくなってしまい、仕事に就けない状態が続いているというのです。

大人のアトピー性皮膚炎は、悪化すると治りにくい

 健二さんの主治医で、スキンケア指導など患者教育にも力を入れる同院教授の矢上晶子医師によれば、アトピー性皮膚炎の多くは子どものうちに寛解し、症状がほぼ消失しますが、一部の人は成人になっても症状が続きます。また、健二さんのように思春期に再び悪化するケースもあります。大人になってからアトピー性皮膚炎を発症するケースもありますが少数です。

「アトピー性皮膚炎は慢性的な疾患ですが、大人の場合、きれいだった肌が1カ月後には炎症で真っ赤になってしまうなど、短期間のうちに重くなることがあります。一度、悪化するとなかなか治らないのも特徴です。悪化のきっかけとして学業や仕事などによる心理的ストレスによるものが多いことがわかっています」

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かゆみとかきむしりの悪循環