「メラノソーム」をご存じだろうか。メラニン色素を含む粒のような細胞小器官のことで、現在の鳥類の羽毛にもあり、その形や並び方によって羽毛の色が決まることがわかっている。中国とアメリカの共同研究チームが、羽毛の生えた恐竜アンキオルニスの化石にこの「メラノソーム」を見つけたことで、私たちは単なる想像ではなく、科学的根拠をもって推定された恐竜の羽毛の色を目にすることができるようになった。
実際、中国とアメリカの共同研究チームは、2010年にアンキオルニスの羽毛の色の推定結果を発表した。同じ方法で、白亜紀前期のシノサウロプテリクスやミクロラプトルなどの羽毛の色も推定されている。
累計1400万部の人気学習漫画、「科学漫画サバイバル」シリーズが、2008年に刊行した『恐竜世界のサバイバル1・2』の改訂を進め、10月に『恐竜世界のサバイバル1 改訂版』(文 洪在徹/絵 相馬哲也/監修 平山廉) を刊行したのは、こうした最新の研究成果を反映するためだ。実際、科学は恐竜を巡るさまざまな謎を明らかにしてきた。『恐竜世界のサバイバル1 改訂版』から、そのいくつかを紹介したい。
例えば、ジュラ紀の地球に存在していた竜脚形類と呼ばれる恐竜たち。体長35メートルとされるディプロドクスや、30~33メートルとされるアルゼンチノサウルスなどがそれだ。後にも先にも、地球上に竜脚形類より大きな生物は現れていないとされ、なぜこれほど巨大化したのかはいまも謎に包まれている。
体が大きいほうが肉食恐竜に襲われにくかった、成長が早かった、エサが豊富にあった、といったことも巨大化の背景にあったと考えられているが、注目されているのは大型の竜脚形類が持っていた「気のう」という袋。哺乳類は吸うときとはくときの空気の通り道が同じなので、酸素の多い「吸う空気」と二酸化炭素の多い「はく空気」が混ざる。結果、肺から血液中に取り込む酸素は少なくなる。「気のう」を持っている場合、吸う空気とはく空気が混ざらないので、酸素の多い空気が肺に入る。これによって、巨大な体を維持するのに十分な酸素を血液に取り込むことができたという。