給料は上がらないのに、平均寿命は延びるばかり。定年後も働けば「老後破綻」は回避できるというが、それで十分といえるのか。老後のお金は生涯かけて準備する時代に入ってしまった……。AERA 2023年10月30日号より。
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関東地方に住む女性(68)は、同い年の夫とともに年金「繰り下げ」を行っている。「繰り下げ」は、65歳からの受給開始が基本の年金を遅らせてもらうことで年金額を増やす手法だ。
「年金は終身でもらえます。毎月来る定期収入は1円でも多く増やした方がいい。それが繰り下げをする動機ですね。60歳代前半の生活からレベルを下げたくないとも思います。やっぱり月に40万円程度はほしいです」
自らは月10万円程度の団体の仕事をしていて、その仕事をやめるまでは繰り下げを続ける決意だ。夫は66歳で働かなくなってからは趣味に生きる生活だ。約1千万円の定期を解約し、毎月、一定額を取り崩している。それが尽きた時、夫は繰り下げ待機を止めるつもりという。
「お金の不安でいけば、介護が怖い。できれば在宅で長くいたいので、お金でいろいろなサービスを買えるようにしておきたいです。子どもに迷惑をかけたくないから、取れる選択肢は広げておきたいとも思います」
確かに、必要になるかどうかはわからないものの介護にはお金がかかりそうだ。有料老人ホームなどを考えると、ピンキリだが入居の際の一時金だけで1千万円単位になるところもある。そこまでは望まなくても、それなりの準備が必要とするのは、老後資金に詳しいFPの井戸美枝さんだ。
「かかるお金も期間もばらついていますが、介護期間が10年以上に及び1千万円以上かかることもあります。生命保険文化センターの調査では、介護費用と住宅改修などを合わせたトータルの平均で約580万円としています。ほかに医療の備えも必要で、医療費の自己負担額と入院費で、こちらは250万円程度みておくといい。合わせて『医療+介護』で830万円程度を見ておくと安心と私は言っています」