『土漠の花』や『機龍警察』シリーズ、『コルトM1851残月』などで次々に文学賞を受賞している作家、月村了衛。本書は月村の最新作にして、直球かつ豪速球のエンターテインメント小説だ。
 水楢中学校の野外活動部に所属する7人の中学生たちは、脇田教頭と臨時女性教員の由良の引率のもと、恒例の合宿に訪れていた。しかし、武装した犯罪集団「関帝連合」がとある目的からキャンプ場を占拠。薬物を濫用した半グレたち、中国拳法を使う少年、屈強な黒人のジョンとボブ……暴力が襲い掛かる絶体絶命の状況の中、由良は正体を現す。実は彼女は、〈最後の赤軍〉〈最後の闘士〉の異名を取る国際テロリスト・三ツ扇槐だった──。
 極限の状況下で、誰もが大きく変化する。ヒロインの由良や子どもたちはもちろんだが、印象深いのは〈学校一嫌われ者〉と称される脇田教頭。彼はかつて教育熱心な教師だったが、ある出来事を機に情熱を失っている。彼らは戦い、自らの誇りを手に入れる。その瞬間、読者の心は強く動かされるはずだ。

週刊朝日 2015年6月26日号

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