さて、ヒトにおけるNMNの効果に関する研究は、まだ初期段階にありますが、一部の臨床試験では、NMNサプリメントの摂取が特定の健康指標の改善に寄与する可能性が示唆されています。

 例えば、高齢者を対象とした試験では、8週間のNMN摂取により、運動能力が向上したことが報告されています。また、別の試験では、腎臓病患者において、12週間のNMN投与が貧血の症状を改善する効果が確認されています。これらの研究により、NMNの短期的な安全性と、抗加齢効果の可能性が示唆されています。

効果を確実にするためには、さらに多くの研究が必要

 しかしながら、NMNはあくまでもサプリメントであり、医薬品的な効能効果を標榜することは禁止されています。また、効果を確実にするためには、さらに多くの研究が必要です。現時点では、NMNの代謝や適切な投与量に関する情報は限定的です。さらに、長期的な抗加齢効果を証明するには、より大規模な臨床試験が必要とされています。

 将来的には、NMNの抗加齢メカニズムの詳細解明や、科学的エビデンスの蓄積が期待されます。今後の研究によっては、NMNが実際に健康寿命の延伸に寄与する可能性が現実のものとなるかもしれません。抗加齢医学の進展は多くの注目を集めています。NMNの研究はその重要な一環となることでしょう。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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