至極便利は「暮らし」に根が生える?(イラスト:サヲリブラウン)
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 作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。

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 現在の家に引っ越してから3年。ようやくテーブルを買いました。

 本来なら、ダイニングテーブルとリビング用のテーブルがひとつずつ欲しいところ。しかしそんなスペースはないので、ダイニングテーブルにもリビングテーブルにもなりうる上にソファの前に置いてもぴったりなデザインの、大きめのコーヒーテーブルを購入しました。

 ネットには狭い日本の住宅事情を考慮した商品がたくさんあり、この「狭さ」こそが日本の創意工夫力を育てたのだなと、パソコンの画面を前にひとりうなずく私。

 家具だけではありません。収納グッズなど、企業の凄まじいリサーチ力と制作者の想像力から、消費者すら無自覚だったニーズが掘り起こされ、痒いところに手が届く商品が次から次へと生まれている。食品や消費財だってそうです。海外モノを手に取れば、蓋が開けづらい、袋が簡単に開けないなんてことがザラにあります。あれ、なんで解消されないんだろう。

 さて、テーブルの話に戻しましょう。このテーブル、高さは40センチほどですが、絨毯の上に座って囲めば6人は座れます。まあまあ大きいのです。しかし、威圧感は皆無。デザインも控えめでヨシ。

 ひとりで使う家具ながら大きなものを買ったのは、ちゃんとしようと思ったから。いままでは小さなコーヒーテーブルの上をいっぱいにして食事も仕事も済ませていたけれど、これからは余裕をもって何事にも挑めます。

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