俳優の財津一郎さんの訃報が10月19日に流れた。かつては吉本興業に所属し、1960年代に放送されたコメディー番組「てなもんや三度笠」に出演、「○○してチョーダイッ」などのフレーズで人気を博した。そして財津さんといえば、だれもがおなじみのあのCM。20年以上流れ続けており、赤ちゃんが泣きやむ曲としても知られている。 長く愛されたあの曲は、どうやって生まれたのか。
中古ピアノの買い取りや販売の「タケモトピアノ」のテレビCMは、テレビを見る人なら必ず耳にしたことがあるだろう。
タキシード姿の財津さんが、
「もっともーっと、タケモット」
「ピアノ売ってチョーダイ」
「電話してチョーダイ」
と少し高めの美声で歌う。
あの独特の映像と、耳に残る曲。CMは2000年から流れ続けてきたという。
財津さんは人生を変えてくれた人
作曲したのは音楽家の谷本成久さん(56)。現在は関西を中心にバンド活動をしている。
「財津さんは私の人生を変えてくれた人でした。音楽家としてあちこちに行きますが『これまでにどんな作品を』と聞かれて、『タケモトピアノ』と言うと、誰もが納得して仕事を出してくれました。私の大恩人です」
タケモトピアノのCMは、アップテンポのものと、スローで優雅なものの2パターンがある。どちらも、谷本さんがCM曲を手掛けた。
タケモトピアノのCM曲の話が舞い込んだのは2000年ころだった。
親しいCMプロデューサーから声がかかり、10曲ほど作って収録したという。
「財津さんがミュージカルで歌って踊るというイメージで発注がきました。財津さんは有名な俳優さんで、私も映画などでよく知っていました。ゴージャスなアメリカ映画のテーマのようなものから、俗っぽいもの、和風など10曲ほど作りました。その中から選ばれたのが、アップテンポとスローな2つでした。選んでもらったのはよかったのですが、プロデューサーから『A曲の前半とB曲の後半をつなぎ合わせて』というリクエストがきました。2つの曲を1つにしてCMソングになりましたね」
と谷本さんは振り返る。