藤井聡(ふじい・さとし)京都大学教授 1968年奈良県生まれ。専門は、国土計画・経済政策等の公共政策論。2012 年から 18 年まで内閣官房参与を務める

 コロナ禍を経て、さらに物価高に見舞われているなかで、国民からは消費税などの減税を求める声が多く上がっている。

 こうした民意を受けて、岸田首相は「税収増の一部を国民に還元する」意向を示している。

 国民の期待に応える政策を期待したいところだが……。

大企業のための減税

 17日に自民党がまとめた提言では、賃上げに取り組む企業への減税やGXの分野などに投資する企業への減税を盛り込んだが、国民の生活に直結する所得減税や消費減税については盛り込まれなかった。

 これに対し、SNSでは失望の声が噴出。岸田首相は20日に期限付きの所得税減税を検討するように指示を出した。

 藤井教授はこう語る。

「自民党が当初まとめた提言は、大企業のための減税です。庶民のための減税ではありませんでした。税制は本来、国民のためにつくられるもので、富が偏ってしまう資本主義の行き過ぎを是正するためのものなのですが、現在は大企業のためのものになっている。大企業を中心にした『税制資本主義』かのような状況になっています」

 消費減税については実現の可能性はないのだろうか。

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