元朝日新聞記者でアフロヘアーがトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。
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先日、大阪へ日本酒イベントのお手伝いに行って2泊したんですが、その時たまたま泊まったホテルがとても良かった。いわゆる普通のビジネスホテルなんですが、その普通さに感激したのである。
で、何が良かったのかというと、フロントに人がいてにっこりチェックインの手続きをしてくれて、部屋も余分な家電がなくテレビもコンパクトで、狭くともすっきり落ち着き清潔感いっぱい。おかげでハードな日程にもかかわらず心身ともリラックスして寝ることができて、元気にミッションを終え無事帰京したのだった。
こんな「普通」のホテルに出会うことが、どんどん難しくなってきている。
まず、フロントに人がいても、横にマシンが置いてあり自分で操作してチェックインせねばならぬことが今や「普通」だ。この操作が案外ややこしく、ほとんどの場合途中でまごついてアタフタし、結局は目の前に立っているフロントの人に「すみません!」とお願いして手伝ってもらうんだが、そのたびに、いやこれだったら最初からそちらで操作して頂いた方が効率的なんじゃ……と思ってしまう。というか、到着した時に人が迎えてくれて手続きをしてくれることこそが最大のおもてなしだったってことに、それが失われて初めて気付いたのである。