全国各地で紅葉のシーズンが始まった。その矢先の10月7日、栃木県那須町の朝日岳(1896メートル)で、60~70代の男女4人が低体温症で死亡する山岳事故が起きた。悪天候や判断ミス、不十分な装備などが遭難の要因とみられるが、そもそも中高年は低体温症にかかりやすく、登山には慎重な姿勢が求められると専門家は指摘する。
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「危険なところがなく、普段なら体力的にも技術的にも問題なく登れる山です」
事故があった朝日岳について、栃木県山岳・スポーツクライミング連盟の植木孝指導委員長は言う。
そんな山で10月6日昼過ぎ、「同行者が動けなくなった」と相次いで警察に救助要請があった。警察や消防が救助に向かったが、風速40メートルに迫る強風と氷点下の気温に阻まれ、登山者までたどりつくことができなかったという。
この日は、どのような気象状況だったのか。
6日朝は、日本の東にある低気圧が急速に発達し、さらに北海道西部にあった低気圧が南下。北海道から東北にかけての広い地域で、台風並みの暴風が吹き荒れた。さらに、この時期としては強い寒気が南下し、富士山を除く全国各地で初の冬日となった。
6日が西高東低の「冬型」の気圧配置となり、北日本や東日本を中心に強い風が吹くことは、前日のニュースでも取り上げられていた。
しかし、植木さんによると、遭難者のリュックサックは夏のハイキングを思わせる小さなものだったという。おそらく雨具はあっても防寒具は持っていなかったのではないかと、植木さんは推測する。
「でも、装備よりも問題なのは天候の判断ミスです。天気予報を見れば、冬型が強まって山では雪混じりの強い北西風が吹くことは容易にわかったはずです。登山を2日後に延期すれば、楽しい山登りになったはずなのに……」