また、介護サービスの利用を「他人の世話を受けている」と卑屈にとらえ、その卑屈さからうまれる感情を振り払うように、どんなときにもマウントを取りたがる人も、ハラスメントを起こしやすいタイプです。「私が注意したから、私が大目にみているから、トラブルにならずにすんでいるのよ」、そして揚げ句の果てには「ほかの事業所に変更しようと思えばできるところを、我慢して使ってやってるんだ。ありがたいと思いなさい」とモラハラ発言が飛び出します。

 もう一つは、何かあるとやたらと大騒ぎしてすぐお金を請求するタイプです。普段はほとんど面会に来ず、介護スタッフにまかせっきり。しかし、たとえば在宅でサービスを受けている親が転倒して骨折・入院となると、「損害賠償は?」「保険は?」「入院中の親の家の光熱費は?」「家族が病院に駆け付けた交通費は?」と、お金のこと、自分たちが有利になることばかりを思いつくままに一方的に言ってきます。介護スタッフのことはまるで私費で雇っている使用人のように扱う、「介護サービスを利用する客だから何をやってもいい」「お金を払っているんだから、権利がある」と、誤った客意識・権利意識をもっているタイプです。

 そして、最も多いのが、ハラスメントについて知識・認識不足で、それがハラスメントにあたると知らずに、無自覚にハラスメント行為をしてしまうタイプです。

被害者である介護スタッフ側の対策不足も原因に

 じつはハラスメントがなくならないのには、被害者である介護スタッフ側の認識不足にも原因があります。

 介護スタッフは、利用者からハラスメントに該当するような行為を受けても、「ここで私が『やめます』と言うわけにはいかない」「私が見放したら、この利用者はどうなるかわからない」という、過剰ともいえる責任感・正義感・使命感をもってだれにも相談せず、一人で背負ってしまうのです。これは間違った使命感なのですが、いままでは「それは違う」と指摘する人がいませんでした。さらにいえば、事業所全体で「プロなんだから上手にかわしましょう、我慢しましょう」という風潮になっている場合も少なくありません。

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組織として防ぐ・対処する態勢がまだ整備されていない