「批評家・哲学者」と「経営者」という二つの顔を持つ東浩紀が『訂正する力』(朝日新書)を刊行。聞き手・構成担当の辻田真佐憲さんに同書に寄せる思いを聞いた。AERA2023年10月16日号より。
* * *
今回、私が聞き手・構成を務めるにあたり、他ではできないものにしたいと思いました。東さんは以前から戦後日本や戦後民主主義をどうアップデートするのかということを言っているので、第4章の歴史編では日本とは何かという話、日本を今後どうしていくのかという質問をあえてぶつけてみました。
物書きの世界では昔から大学に所属するアカデミズム系と、私のようなフリーのジャーナリズム系の2系統が存在していました。最近、その間を横断するのは難しくなってきていますが、東さんはその結節点。そのバランスが取れているのは、ビジネスとして常に顧客のフィードバックがあるところで、現在の状況に対応しながら仕事をされていることも大きいと思います。
専門に分かれておらずいろいろなテーマ、例えばサブカルチャー、政治、経済から外国のことまでを知識人がざっくばらんに語る本は、いまではネガティブにとらえられすぎています。新書は、専門家が一般読者向けに啓蒙のために書くものというイメージが強くなっていますが、同時に知識人がざっくりと世界や社会の全体像を示すような場でもあった。本書はそういう本になっていると思います。ある種反時代的ではありますが、いまの専門家の時代においても、一定の需要はあるのではないか。だから構成にあたっても、できるだけ雑談的な部分も入れるようにしました。
「おわりに」で「辻田さんの作曲に合わせて歌詞を書いているかのような、奇妙な経験」と面白いたとえで書いていただいているのですが、ある種のコラボみたいに受け取っていただけるなら嬉しいですね。
※AERA 2023年10月16日号