NPO法人「DOG DUCA」代表でドッグトレーナーの高橋忍さん

犬はいつからでも変わることができる

 主従関係を築くための一つのテクニックが、「テリトリーの外でエサをあげること」だと、高橋さんは言う。

「特定の部屋やサークルなど、いつも犬が生活している場所でエサをあげることは、人間にたとえると子ども部屋にごはんを運んでいるのと同じ状態。『リビングに下りてきなさい』と教えるように、あえて縄張りではない場所に来させ、そこで食事にありつけるという状況を作ることで、強い者が弱い者に与えるという主従関係が成立します」

 高橋さんは、これまで1000頭以上の保護犬のトレーニングに携わってきた。その経験をもとに、「心のケアと育て直しができれば、犬はいつからでも変わることができる」と断言する。

「アパートの部屋に1年間閉じ込められ、孤独のあまりひどいかみつき癖がついたボーダーコリーなど、心を病んだ多くの子たちと向き合うなかで、心のケアの重要性を痛感してきました。バイデン大統領の犬であれば、きっと優秀なドッグトレーナーがついていたと思いますが、言うことを聞かせるスキルを持っているだけでなく、犬の痛みや不安を理解できる人間でないと、救えない子たちもいるのが現実です」

 次にホワイトハウスにやってくるファーストドッグには、ご主人のそばで健やかに暮らせる日々が待っていますように。

(AERA dot.編集部・大谷百合絵)

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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