犬はいつからでも変わることができる
主従関係を築くための一つのテクニックが、「テリトリーの外でエサをあげること」だと、高橋さんは言う。
「特定の部屋やサークルなど、いつも犬が生活している場所でエサをあげることは、人間にたとえると子ども部屋にごはんを運んでいるのと同じ状態。『リビングに下りてきなさい』と教えるように、あえて縄張りではない場所に来させ、そこで食事にありつけるという状況を作ることで、強い者が弱い者に与えるという主従関係が成立します」
高橋さんは、これまで1000頭以上の保護犬のトレーニングに携わってきた。その経験をもとに、「心のケアと育て直しができれば、犬はいつからでも変わることができる」と断言する。
「アパートの部屋に1年間閉じ込められ、孤独のあまりひどいかみつき癖がついたボーダーコリーなど、心を病んだ多くの子たちと向き合うなかで、心のケアの重要性を痛感してきました。バイデン大統領の犬であれば、きっと優秀なドッグトレーナーがついていたと思いますが、言うことを聞かせるスキルを持っているだけでなく、犬の痛みや不安を理解できる人間でないと、救えない子たちもいるのが現実です」
次にホワイトハウスにやってくるファーストドッグには、ご主人のそばで健やかに暮らせる日々が待っていますように。
(AERA dot.編集部・大谷百合絵)