ホワイトハウス“追放”は2匹目
なぜ、コマンダーは人を襲い続けてしまったのか。高橋さんによると、二つのポイントがあるという。
一つ目は、乳児期を親やきょうだいと一緒に過ごしたかどうか。人と同じように、犬も仲間との関わりあいのなかで社会性やコミュニケーションスキルを身につけ、自分より強い相手には降参するなどのルールを覚える。しかし、その社会性が育っていないと、ほかの犬や人間を怖がり、ほえる・かむといった問題行動につながりやすいのだという。
もうひとつは、人をかんだときにどのような対処をしたかだ。かつては悪いことをしたら罰を与えるのが一般的なしつけだったが、攻撃行動というのはあくまで反射的なもので、罰によって抑止できるものではない。もし、コマンダーがかみついたときに、大勢で取り押さえたり、思いっきりリードを引っぱったりと苦痛や恐怖を与えていたら、ますます人間への警戒心が強くなり、かみつきがエスカレートすることは十分考えられるという。
実は、ホワイトハウスを追放された犬は、コマンダーが初めてではない。バイデン大統領のもう1匹の愛犬で、コマンダーと同じ元保護犬のジャーマンシェパード「メジャー」も、スタッフへの攻撃行動が治らず、大統領の友人宅に預けられた。
大勢のスタッフが絶え間なく出入りするホワイトハウスで、犬が幸せに暮らすことは不可能なのだろうか? この問いに、高橋さんは「いやいや」と大きく首を振った。