お寺や神社に行く理由で、もう一つ大事なことがあります。それは、人が苦難から抜け出していくときには、「静けさ」が必要だからです。
自宅や自室というのは想像以上に騒がしい場所です。騒がしさの正体は、頭の中の自分の声。「どうしようどうしようどうしよう」「何やってもうまくいかない」と夜寝る時にもずっと鳴り響いている。自室は悩みに対して歯止めが利かなくなりやすいです。
お寺や神社では、自宅と同じように悩むのは難しいと思います。ご本尊がいて、掃き清められた静けさがあって、という環境設定がある。観光客の人もいて少しよそ行きの自分になれるから、自然と背筋が伸びますよね。
一時期ブームだった自己責任論とか自力救済は、もうね、しんどいです。現代は自力救済の限界に達してしまったと僕は思っています。
お寺に行って、話を聞いてもらって、共有してもらう。解決策をもらうわけじゃなく、世間話をするだけでもいいです。同僚などと違って自分と利害関係がない人たちだから、話しやすいと思いますよ。
※AERA 2023年10月16日号