ちなみに、日本人初ということもあって、日本では本塁打王獲得が大きく報じられているが、アメリカでは話題になっていない。大谷は確かにアメリカン・リーグの本塁打数トップだが、メジャー全体では4位である。ア・リーグとナショナル・リーグの違いがほぼ無くなった現在のメジャーで、リーグ別のタイトルというのは注目されなくなっている。試しに野球好きのアメリカ人に聞いてみたところ、全体トップがマット・オルソンだとは知っていたが、ア・リーグのトップについては「分からない」と答えた。

 今やメジャー最高打者の一人である大谷が、本塁打王になったところで、何の驚きもない。現地の専門家やファンに聞いても似たような反応だ。大谷の長打力をもってすれば、必然だとすら感じる。

「外国人にパワーで劣る」と感じる日本人が、「パワーの象徴」である本塁打で大谷が1位になることに誇らしさを感じる気持ちは分かる。ただし、本塁打王獲得によって大谷の現地評価が上がったということはない。逆になれていなかったとしても、価値が下がることもない。

 大谷は、「日本人初の本塁打王」よりも、はるかに評価されるべき偉業を、この3年間で成し遂げてきている。投打のそれぞれでメジャー最高クラスの活躍を続けるなんて、日本人どころかメジャー史上でも大谷しかいないのだ。(在米ジャーナリスト・志村朋哉)

AERA 2023年10月16日号より抜粋

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