今回の日本産海産物の全面輸入停止の背景には、第一に中国国内で高まる政権への不満がある。ゼロコロナもあり、中国の経済成長率は鈍化傾向にあり、若年層の失業率は20%を超え、経済格差も広がっている。今回の処理水放出を全面輸入停止は、国民にアピールすることで習政権への批判をかわし、その不満の矛先を日本へ向けさせる狙いがあった。

 また、米中間で先端半導体を巡る覇権競争が激しくなる中、日本が7月下旬に米国と足並みを揃える形で、先端半導体の製造装置など23品目で対中輸出規制を開始したことで、中国側の貿易面での不満に拍車が掛かっていたという背景もある。ほぼ同時期、中国は半導体の材料となる希少金属ガリウム・ゲルマニウムの輸出規制を8月から開始。その延長線上で今回の日本産海産物の全面輸入停止も考えられる。

 今後、さらに日中間では貿易面を巡る摩擦が拡大していくことが予想される。そのような中、日本企業は中国とどう向き合っていくのだろうか。

 実は、今回と似たような件は過去にも度々あった。たとえば、2005年に当時の小泉純一郎首相が靖国神社を参拝した時、中国では反日感情が高まり、各地で反日デモや暴動が発生した。2010年9月には、沖縄県・尖閣諸島で中国漁船と海上保安庁の巡視船が衝突して中国人船長が逮捕されたことがきっかけで、中国は対抗措置として日本向けのレアアースの輸出を突然停止した。2012年9月には当時の民主党・野田政権が尖閣諸島の国有化を宣言したが、その後中国メディアが一斉に対日批判を展開し、中国各地では反日デモが拡大し、パナソニックの工場やトヨタの販売店などが放火され、日系のスーパーや百貨店などが破壊や略奪の被害に遭った。また、中国政府は日本からの輸入品の通関を厳格化させ、遅滞させるなどした。

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今回も同じようになる?