福島第一原発の処理水放出を巡り、日中関係がいっそう冷え込んでいる。過去にも日中間では政策をめぐってたびたび摩擦が起きたが、依然として中国は日本にとって重要な貿易相手国であり続けてきた。今回も時間が経てば関係性が戻るかというと、そうとも限らないという。日本企業へ地政学リスク・経済安全保障の分野でコンサルティングを行っている和田大樹氏が考察した。
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日本各地の行政機関や漁業機関、はたまた全く関係のないところにまで国際番号86からランダムに無言や暴言を吐くような電話が掛けられ、いたずら行為が横行している。この背景には、“日本、日本人が決定したから誰に掛けてもいい”という考えがあるようだ。また、中国に多くの海産物を輸出してきた企業などは経営的難題に直面することになり、今回の件で日本行きの航空券キャンセルが3割増加するなど観光業者の間でも懸念の声が広がっている。
一方、影響は日本国内だけでなく、中国国内にも広がっている。ネット上では日本製品の不買運動が呼び掛けられるなど反日的な雰囲気が強まり、中国各地にある日本人学校や領事館などには卵や石が投げ込まれ、反日的な落書きが発見されるなど、在中邦人の安全が懸念される状況となっている。北京にある日本大使館も外出時に大きな声で日本語を話すのを控えるなど、在中邦人に注意を呼び掛けている。