斎藤さんの目には、特に今回、新型コロナウイルスや大規模災害といった従来の補正予算編成にあたって打ち出してきた巨額の予算を投じるための名目が見当たらないように映る。内閣府が9月に発表した推計結果は、日本経済の供給力と需要の差を表す「需給ギャップ」が小幅ながらプラスに転じた。常とう句のように使ってきた「脱デフレ」も、補正予算を組む上で前面に打ち出しにくくなっている。
このため斎藤さんは「『物価高』がバラマキ対策を行うための格好の理由として用いられた」とにらむ。
「本当に物価高を抑えたいのだったら、緩和策をやめなければ筋が通りません。緩和策でインフレを後押ししているのに物価高対策を行うなんて、アクセルとブレーキを同時に踏むようなもので、支離滅裂です。今はむしろ財政支出を抑制して景気を冷ます局面ではないでしょうか。衆院解散や総選挙への思惑があるから、誰もそんなことは言いだしにくいのでしょう」
国民受けを狙ったバラマキ対策が物価高をさらに押し進め、かえって国民の首を絞めかねない状況にある。岸田首相は、こうした矛盾を解きほぐせるか。
(AERAdot.編集部・池田正史)