パーキンソン病では、神経伝達物質の一種「ドパミン」が減少しています。その結果、体の動きをうまく調節できなくなる「運動症状」に加え、便秘、不安、睡眠障害など多彩な「非運動症状」も起こります。症状に気づき、診断から治療開始へとスムーズに進む例もあれば、適切な診断にたどり着くのに時間がかかる例もあります。診断までのプロセスや間違いやすい病気などについて、パーキンソン病を専門とする脳神経内科の医師に聞きました。この記事は、週刊朝日ムック「手術数でわかるいい病院」編集チームが取材する連載企画「名医に聞く 病気の予防と治し方」からお届けします。「パーキンソン病」全3回の2回目です。
【図版】パーキンソン病と似た症状が出る病気10種類一覧はこちら(医師監修)
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手足がふるえる振戦(しんせん)、筋肉がかたくなる、動作が遅くなるなど、パーキンソン病の運動症状は、「パーキンソニズム」と呼ばれますが、ほかの病気でも起こることがあります。原因となる病気が違うと治療法が異なるため、パーキンソン病なのか、それともほかの病気なのか、適切に診断することは大変重要です。
ふるえは気づきやすい症状の一つですが、パーキンソン病かと思っていたら「本態性振戦(ほんたいせいしんせん)」だったという例はよくあります。本態性振戦は原因不明で手足、頭、声などがふるえるもので、それ以外の症状はほぼありません。パーキンソン病のふるえは、静かにしているときに起こりやすいのですが、本態性振戦では動作をしているとき、ある特定の姿勢をとったときに起こりやすいという特徴があります。ほかにも、過度に緊張したときなどに起こる生理的振戦だったという例もあります。逆に「ふるえは年齢のせいだろう」などと軽視していたら、パーキンソン病だったということもあります。
パーキンソン病に似た病気がいろいろある
間違われやすい病気には、髄液の流れが悪くなる「正常圧水頭症」や頭をぶつけたあと数週間から数カ月後に起こる「慢性硬膜下血腫」、脳血管障害による「脳血管性パーキンソン症候群」、抗精神病薬や抗うつ薬などの薬の副作用で起こる「薬剤性パーキンソン症候群」などがあります。さらに脳神経に変化が生じて起こる「皮質基底核変性症」「進行性核上性麻痺(まひ)」「多系統萎縮症」があり、これらはパーキンソン病との区別が特に難しいといわれています。