パーキンソン病を専門とするのは、脳神経内科です。ところが、症状があってもパーキンソン病を疑わず、最初に整形外科や心療内科などを受診する例があります。
専門医の少ない地域での医療相談にも取り組む国立病院機構宇多野病院臨床研究部長の大江田知子医師は、次のような例を紹介してくれました。
「パーキンソン病では、患者さんによっては足を引きずるようになることがあります。そうした場合、まず整形外科を受診する方は珍しくありません。ある方は、脊椎(せきつい)の画像検査などで脊椎管狭窄(きょうさく)症と診断され手術を受けました。足にはしびれの症状もあって、それは改善しましたが、歩行の問題は改善しませんでした。その後当科に紹介されパーキンソン病と診断しました」
パーキンソン病の患者会との交流に力を入れている順天堂大学順天堂医院脳神経内科准教授の大山彦光医師は、痛みの症状についてこう言います。
「パーキンソン病では、ドパミンが減少することで痛みを感じやすくなります。筋肉がかたくなるという症状を痛みと感じることもあります。肩が痛いなどで整形外科を受診しX線検査で異常はないと言われ、マッサージや鍼灸(しんきゅう)に通ううち、ほかの運動症状が出てきたことで、パーキンソン病と診断される例もよくあります」
表情が乏しくなったり、声も小さくかすれたり、動作も鈍くなって外出がおっくうになることもあります。このような症状では、「元気がない」と家族がうつ病を疑って心療内科を受診する例もあります。パーキンソン病の正しい診断を受けるには、脳神経内科を受診するのが最も確実です。受診先がわからないときは、日本神経学会のホームページで神経内科の専門医や主要な病院を探すとよいでしょう。
診察や画像検査などから総合的に診断
受診すると、脳神経内科医は発症からの症状経過や、これまでかかった病気や合併症について詳しく「問診」をします。今使用している薬剤の情報も重要なので、必ずお薬手帳を持参しましょう。また、表情、体の動きや歩行状態を観察するとともに、手足などに触れ動かしたりして、パーキンソン病の症状があるかを見極めます。また診察道具を使って、パーキンソン病では起こらない症状がないかなどを確認します。これらによりほぼ診断のめどがつくこともありますが、多くの場合、脳MRI検査などで、ほかの病気の可能性がないかを確認します。