ABEMAのバラエティ番組『世界の果てに、ひろゆき置いてきた』が人気だ。プロデューサー高橋弘樹氏に話を聞いた。AERA 2023年10月9日号より誌面に掲載できなかったスピンオフバージョンをお届けする。
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―――今回AERA10月9日号では「悩みに効く本」というテーマで5冊選んでいただいたわけですが、その中の1冊が『アジアン・ジャパニーズ』。
高橋:いや〜、懐かしいな。写真がめっちゃいいですよね。多分最初に手に取ったのは20代前半、大学時代だったと思います。旅が好きでバックパッカーもやっていたんですが、どこに行こうかと迷っていた時にこれを読んでアジアに決めた記憶がありますね。人生の目的もわからない、どこに向かっているのかすらもわからない人が彷徨うのがアジアだというようなことが書いてあって、自分も大学時代はまだこれといった目標がなく、もやついていたのでアジアにいこうと(笑)。
―――ABEMAで配信されているバラエティ番組『世界の果てに、ひろゆき置いてきた』が人気です。高橋さんはこの番組をプロデュースされましたが、この番組も『アジアン・ジャパニーズ』の影響を受けている?
高橋:番組の空気感やトーンは『アジアン・ジャパニーズ』とか沢木耕太郎の『深夜特急』あたりの影響は受けていると思います。というのも、単なる紀行ものの映像番組というよりはどっちかっていうと、エッセイ的な作りを意識していたからです。
―――エッセイ的な作りとは?
高橋:映像をメタファーとして捉えたものや主感を前面に出すことですね。それをテロップなどでさりげなく入れることもあります。たとえば、『世界の果てに、ひろゆき置いてきた』の最終回の一つ前の回でひろゆきさんが一人でアフリカのザンジバル島に行くんですが、船にたくさん人が乗っている中で、船から飛び出して一人おじさんが泳いでいるシーンがあるんです。このシーンは別に意味もないし、現場のディレクターは「何やっているんだ?」と笑っている。ただそのシーンから「人と違う道から離れて1人で生きていく」っていうものを感じ取ったらエッセイ的になる。実際、人間社会はでも我が道を行く人って後ろ指さされたり嘲られたりするじゃないですか。特に今回の番組は旅を人生のメタファーとしてずっと描いていたので、そのような手法を使うことはアリかと思っていました。