10月1日に導入予定のインボイス(適格請求書)制度に対し、中小・零細企業や個人事業主らの不安が高まっている。対応次第で新たに納税の義務が生じたり、取引相手から取引を打ち切られたりする恐れがあるためだ。元静岡大教授で税理士の湖東京至さんは「企業や消費者に何のメリットもない」として、導入の中止を訴えている。
――政府の狙いについて。
日本でも今後、消費税の税率を欧州並みの15%や20%へ引き上げるための布石だとみています。税率が欧州並みに高くなると、納税義務者が現在、受けられる「仕入れ税額控除」の把握が大雑把になるとして国際社会から批判を受けかねないためです。
――詳しく教えてください。
前提となる消費税の仕組みから説明しましょう。一般的に消費税は、一つ一つのモノに対して10%、あるいは軽減税率8%の税金がかかり、それがそのまま税務署に納められていると思われています。レシートには本体価格と消費税分が別々に印字されます。そのため消費税分を消費者自身が払っているように感じます。
でも、それは間違いです。消費税を税務署に納めるのは事業者であって、消費者ではありません。
事業者は、年間の売上高に対して税率10%をかけた額から、商品や原材料の仕入れや外注費、さらには建物の修繕費や事務所の家賃、光熱費などに10%をかけた額を差し引いて、納税する額を決めます。