還付金というと、普通は自分が払い過ぎた税金が戻ってくることを言います。しかし、こうした輸出企業は消費税を税務署に納めているわけではありません。つまり、他社が納めた税金を輸出企業に戻していることになります。
この還付の額が大きかったり、還付を受けられる事業者が多くなったりすれば、その国の経済や貿易にとって有利に働き、国際競争力が高まるわけです。ほかの国から見れば、不公平に映ります。
税務署のデータを調べたところ、国内の消費税による税収のうち、4分の1にあたる約6兆円が輸出事業者に還付されています。それだけの規模の〝補助金〟が輸出企業に渡っているということです。
今までのように、消費税の税率が一桁台なら大目にみることもできたでしょう。ところが今後、欧州並みの税率に引き上げられると、還付の額もそれだけ増え、競合の国やその企業は黙っていられなくなる。
インボイス制度は消費税の税率の高い欧州がすでに活用しています。より細かく、税率や税額についての“証拠”を残せるというこの制度を日本にも導入することで、競合する国やその企業からの批判を浴びないようにする狙いがあるとみています。
――導入へ向けて不満も大きくなっています。
消費税が、税務当局が主張するように間接税であるなら、事業者は消費者から受け取った税金を税務署に納めるだけで済むはずです。こういう税金には免税事業者がいること自体、説明がつきません。ところが、消費税は直接税的な税金ですので、所得税などと同様に基礎控除があるのです。
輸出企業への還付もあってはならない。そもそも、直接税的な税金を還付することは国際貿易ルールなどを定める世界貿易機関(WTO)に違反しています。消費税を払ってもいない輸出企業に還付金を払う必要なんてないわけです。
消費税の実態は直接税なのに、間接税らしくみせることが、インボイス制度導入のもう一つの理由だと考えています。矛盾点を残したまま見切り発車したことで、これからも多くの問題が噴き上がってくることでしょう。インボイス制度は企業にも下請け業者にも消費者にも何のメリットもありません。
(AERAdot.編集部・池田正史)