元日本代表の小野伸二選手(44)が27日、今季限りの引退を発表した。FIFAワールドカップに日本史上最年少の18歳272日で出場し、海外の一流チームでもプレーし「天才」と評された。引退発表を機に改めて注目を集めているのが、小野選手の「神トラップ」だ。信じられないほど簡単に勢いのあるボールを止めているが、その仕組みはどうなっているのか。専門家に分析してもらった。
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〈トラップがえぐい。足とボールに磁石でもついているのか〉
小野伸二選手のトラップについて、いまSNSではこんな投稿されている。トラップとは、パスなど飛んできたボールを止める技術のことだ。SNSには遠くから強く飛んできたボールの勢いをうまく吸収し、ボールを足元にピタリと止める動画が投稿されている。
この動画に対してはサッカー経験者からも
〈どうやっているのかわからない〉といった声が上がっている。
サッカーの技術を科学的に分析している専門家はどう見るか。サッカー工学に詳しい筑波大の浅井武名誉教授は「トラップ技術の完成形」と絶賛する。
トラップのメカニズムは簡単に説明するとこうだ。飛んできたボールのエネルギーに対して、逆方向のエネルギーを加えるなどして、ボールのエネルギーを吸収する。ボールのエネルギーがゼロになれば、ピタッと止まるということだ。
ボールは同じ質量の重さのものにぶつかれば、止まりやすい。しかし、ボールの質量に比べて人間の足は重いため、エネルギーを吸収しきれなければ、ボールが跳ね返ってしまう。そのため、関節を柔らかくしたり、つま先にボールを当てるなどして、換算質量(みかけ上の質量)を減らすコントロールが重要になってくる。