メディアの優位性として、紙とウェブを比較してみると見えてくるのはやはり、「信頼性」だろう。以前、某料理ウェブサイトで、離乳食にハチミツを使ったレシピが紹介された問題になったことがある。今でも、正しくない情報がウェブメディアに散見される。では、正しい情報を読者の元に届けるには、何が必要なのか。
竹崎さんは、「記事を1つ作るにしても、出版社の場合は、編集者や副編集長に編集長、校閲など多くの目=フィルターが入ります。間違った情報やフェイクニュースを避ける仕組みが、長年にわたって続けられてきたことが、紙メディアの強みだといえます」と話しながらも、
「しかし、フィルターのかかった情報ばかりを見ていると、 偏った視点といいますか、自分好みの視点だけになりがちになります。本当は、情報こそ多面的に見ることが必要で、紙とウェブを比較した場合は多分、紙からの情報のほうが多方向からの視点が入ってくると思います。同じ情報でも雑誌の場合、写真の有無で読者の受け取り方や想像することが変わったり、レイアウトによって必要な情報を見つけやすくできたりもします」
休刊する雑誌が増えている。もちろん、雑誌離れが進んだ結果、売り上げが芳しくないこともあるが、雑誌広告に頼った収益構造が休刊につながっているともいえる。しかし竹崎氏は「雑誌という形態自体が、必ずしもダメとは思っていません」と話す。
「昨年対比で1割ほど、雑誌市場の部数減は進んでいます。しかし、紙とウェブの両輪で伝えるすべを持っている出版社の場合、速報性はウェブですが、網羅性(全体をまとめる力)は紙の方が強い。雑誌は今、季刊誌が増えていますが、次号までの間をウェブマガジンが繋いでいるという出版社も増えてきました。雑誌名などのブランドビジネスを確立&強化し、読者(生活者)とのコミュニケーションもしっかり取ることが重要だと考えます。今までは、雑誌を発行したらゴールというような、情報を一方通行として届けるだけだった出版社も多かったでしょう。しかし、情報は相互通行が大切です。雑誌へのこだわりが強い編集者と読者の距離を近づけることで雑誌のブランドの価値も高まり、結果としてファンが増えていくと考えます」(竹崎さん)