「コロナ禍を経た今、書店での本の販売傾向や売れる本の内容は変化しました。POS分析(販売時点情報管理)だけでなく、DS.INSIGHT(ヤフーの保有する行動ビッグデータ)や本好きの人がつぶやくX(旧Twitter)などもチェックし『読者がほしい情報』を集約しています。分析した情報は、編集部の企画立案時に大いに利用してほしいです。関連するジャンルの動向などを分析することで、当社でもノウハウを積み上げPDCAサイクルを回して提供価値の向上に努めています。」(竹崎さん)

 分析による需要予測も可能だという。主に出版社の営業部との会議において、発行した新刊の動きから、その後の売り上げはどの程度まで伸びるか、適正在庫数はどのくらいか、市中在庫のあるべき冊数はどれくらいか、返品率の推移はどうなっていくのかをロジックで導き出している。

 ただ、本の売れ行きにはスーパーエビデンスがあるわけではない。

「テレビ番組の中で取り上げられたりすると、急にその本の在庫が逼迫します。重版を出版社が決定しても、オフセットで印刷し市中に並ぶには10日くらいかかります。今、分析には『Tableau(タブロー)』というBIツールを主に使っています。そこには、本のPOSデータだけでなく、グループのhontoサイトにおける行動データや、生活者が『honto with』というアプリで「欲しい本登録」を行った件数データもそのツールで可視化しています。購入前の『認知』や『関心』を測る指標として需要予測などの分析に活用しています。また、SNSのデータの取得や活用についても研究を進めています。」(竹崎さん)

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どうやって本を読む機会を作ってもらうか