「プライベートで、本屋に行くのが好き。海外旅行でも、外国の書店に立ち寄っています」竹崎雄一課長。(写真/すべて長谷川拓美)
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 出版の危機が叫ばれ続けている。

 2023年上半期の紙と電子を合算した出版市場は、前年同期比3.7%減の8,024億円だった。紙の出版市場は同8.0%減となり、電子出版は同7.1%増となった(『季刊 出版指標』2023年夏号、2023年上半期書籍・雑誌分野別動向より)。紙媒体の市場の中でも雑誌の縮小が続き、コロナ特需(自粛に伴う巣ごもり需要)も終息したとみられる。また、報道などで「書店の閉店」を目にする機会も増えているが、メディアが報じるのは出版と書店の危機ばかりで、どうして衰退していったのかが取り上げられることは少ない。

 しかし、将来の出版業界を見据えた取り組みをしている会社がある。世界最大規模の総合印刷会社である「大日本印刷(DNP)」だ。

 DNPは、1876年の秀英舎(東京・銀座)の発足から始まる。1935年には日清印刷と合併し、DNPが誕生した。戦後の印刷業界をリードし続け、出版印刷以外の分野にも果敢に挑み続ける。例えば、IT社会の到来を真っ先に捉え、非接触ICカードを開発した。その後も、NTTドコモの携帯電話用「FOMAカード」の開発、東京医科歯科大学と共同で毛細血管のパターン形成にも成功し、再生医療分野にも進出した。

 出版という軸でDNPを見るならば、歴史ある活版印刷からはじまり、2006年には電子書籍の制作・流通ライセンス事業へ本格的に参入し、08年に丸善、09年にはジュンク堂書店を傘下にし、紙と電子の書籍を提供するハイブリッド型総合書店「honto」を2012年にスタートした。

「出会うべき本と出会える世界を目指しています」

 そう話すのは、大日本印刷 出版イノベーション事業部BLM企画本部データマネジメント部の阿部山吾郎部長だ。

「DNPに対して皆さんが真っ先に想像するのは、エレクトロニクスやパッケージの印刷などかもしれません。私たちのチームである出版イノベーション事業部は、生活者にとって「読みたい気持ちが生まれ、読みたい本を、読みたい時に、読みたい形で」入手できる環境を目指し、営業、企画、製造部門が連携して様々な取り組みをしています。(BLM:ブック・ライフサイクルマネジメント)その実現に向けて、マーケティング分析に力を入れ、本が生まれてから読者の手元に届くまでの、読者との様々なタッチポイントで、SNS分析や購買分析などを実施しています。」

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地名から、「革新」をもたらす部署名に