「急所になる」聞き入れられなかった河野の助言

「聞く力」を掲げる岸田は、原則8カ月を徹底させることで問題を収めようとした。接種前倒しによりワクチンの数量が不足する懸念があったことや、オミクロン株へのワクチンの効き目について科学的知見が出るのを待つ慎重さも、判断を後押しした。

 ところが、2大臣との協議からわずか4日後のことだ。感染力の強いオミクロン株が国内で初確認されると、状況が一変する。政府の水際対策を破って感染は瞬く間に広がり、3回目接種の「8カ月」からの短縮が、皮肉にも最大の焦点となっていく。

 大阪府知事の吉村洋文はその日、府庁で記者団に「8カ月経たないと接種できないというルールは問題だ。感染が急拡大してからでは遅い」と、疑問を投げかけた。

 もともと2021年10月の岸田政権発足前後は、感染状況の下火が続き、「第6波」に備えた病床確保策に比べると、3回目接種の優先度は低かった。

 新政権の姿勢を苦い思いで眺めていたのが、菅前政権でワクチン担当相だった河野太郎だ。

「ワクチン接種の対応はちゃんとしておかないと、政権の急所になる」

 2021年10月、河野は政権運営を担う岸田側近に助言したが、聞き入れられなかった。むしろ、別の政府高官は「ワクチン担当は時限的なもの。来年の供給のめどさえつけばいい」と楽観していた。

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「結局は何も学んでいなかった」