イメージ写真
生前の瀬戸内寂聴さん

 俳優や映画監督としてだけでなく、俳人としても知られる奥田瑛二さん。夏井いつきさんとの子規トークをまとめた『よもだ俳人子規の艶』(朝日新書)では、正岡子規の句について語っているうちに、話題は奥田さんが俳句を始めた意外なきっかけに。本書から一部を抜粋、再編集し、紹介する。

【写真】奥田瑛二さんと夏井いつきさんの写真を見る

*  *  *

夏井:そもそも奥田さんが、俳句をやろうと思ったきっかけは何だったの?

奥田:俳句との出合いは三十代半ばで、ちょうど、テレビドラマの『金曜日の妻たちへIII』や『男女7人夏物語』に出演していた頃ですね。一年間、月刊誌『家庭画報』で著名な方々と対談するホスト役を仰せつかっていて、京都の瀬戸内寂聴さんを訪ねたんです。

 最初は超ビビっていたのですが、そこは寂聴さん、見事でしたね。対談が始まった三十分後には、「ブランデー持ってきて」と(笑)。真っ昼間に、いい感じに飲みながら対談をさせていただいたんです。取材終了後、「今日はあなたがいらっしゃると聞いて、素晴らしい山の料理屋さんを用意したのよ」と。

夏井:いいね、いいね。

奥田:ところが、そこからが一筋縄ではいかなかった。寂聴さんの庵、「寂庵」の本堂を降りたところで、やおら振り返ってこう仰った。

著者プロフィールを見る
夏井いつき

夏井いつき

夏井いつき(なつい・いつき) 1957年愛媛県生まれ。俳人。俳句集団「いつき組」組長。8年間の中学校国語教師を経て俳人へ転身。94年「第8回俳壇賞」、2000年「第5回中新田俳句大賞」受賞。創作活動に加え、「句会ライブ」や講演など、俳句の種まき運動の傍ら、MBS「プレバト!!」など各メディアで幅広く活躍。15年より初代俳都松山大使。主な著書に、『句集 伊月集 鶴』『夏井いつきのおウチde俳句』(共に朝日出版社)、『夏井いつきの世界一わかりやすい俳句の授業』(PHP研究所)、『子規365日』(朝日文庫)、『瓢簞から人生』(小学館)など。

夏井いつきの記事一覧はこちら
著者プロフィールを見る
奥田瑛二

奥田瑛二

奥田瑛二(おくだ・えいじ) 1950年愛知県生まれ。俳優・映画監督。79年映画『もっとしなやかにもっとしたたかに』で初主演。86年『海と毒薬』で毎日映画コンクール男優主演賞、89年『千利休 本覺坊遺文』で日本アカデミー主演男優賞を受賞。94年『棒の哀しみ』ではキネマ旬報、ブルーリボン賞など8つの主演男優賞を受賞する。2001年監督デビュー。近年の出演作に、主演映画『洗骨』(19年/照屋年之監督)、連続テレビ小説「らんまん」(23年度前期/ NHK)などがある。主な著書に、『男のダンディズム』(KKロングセラーズ)、『私の死生観』(共著/角川oneテーマ21)など。

奥田瑛二の記事一覧はこちら
次のページ
あ、ちょっと待って。奥田さん、一句詠んで