
初挑戦となる朗読劇「ハロルドとモード」に出演する向井康二さん。「愛の人」を体現している彼を日々支えている人たちがいる。AERA 2023年9月25日号より。
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――「ハロルドとモード」は、母と息子との物語でもあります。母親の気を引きたいがために狂言自殺を繰り返すハロルドとは対照的に、向井さんの話には、愛情たっぷりのお母さんが自然に、そして頻繁に登場し、数々のエピソードからは、現在の向井さんをかたちづくったのは、その愛情であろうことが感じられます。
向井:「そうね。そうなんやけど、いま、おかんの愛が、重い重い!(笑)。ま、めちゃめちゃ好きやで。好きやし、おかんの愛は感じてます。けど、なんか、愛が膨らんできてんねん! 昔ぐらいがちょうどよかったわ(笑)。俺はおかんに関しては、受け身でいてくれるほうが、かわいがりたいの。やから、待っといたらええのに、『私、あなた、愛してますよ』がね、ちょっとね、しんどくなっちゃう。親ってそういうもんやん? 俺、週2が限界やもん。もう、子離れしい!(笑)
だから最近ね、おとん多いね。番組出たのとかメッセージ来るし。ちょうどいいのよ、おとん」
――以前は、お父さんとはもう少し距離があったのでは?
向井:「あったあったあった。ま、だから、おかんに愛を注いでたぶん、いまはおとんにも注いでる。交代交代。バランス見てんのよ。ママはちょっと待っといてと(笑)」
――でも、それだけ深く愛されてきたからこそ、向井さんも愛が深いのでは?
向井:「ちゃうねん。愛されたいから、愛が深いの! 逆なんよ。エレベーターのドアも、お礼がほしいから開けてるだけで」
――いつもそう言いますが、見返りを求めてでは、あれほど自然に気遣う行動は取れないかと。
向井:「いやいや、汚れてきてるのよ、俺のやさしさもさ(笑)。ま、でも……誰が何をしてくれたって、俺、大事にしてて。例えば誕生日会、みんなで盛り上げてんだけど、絶対きっかけは1人なん。それはちゃんと、フィーチャーしたい。今年、俺の誕(生日)プレ(ゼント)はふっかさん[深澤辰哉さん]が買ってきてくれた、とかね。全員でやってくれてるんやけど、その1人に対するありがとうは、ちょっと多いかもね。
やっぱり、ありがとうと、すみませんは、大事やん。まあ、すみませんは別に多くなくていいんやけど。ありがとう、ありがとう、ごめん、ありがとう、ぐらいの、テンポがいいよね。これがね、意外と、人間は忘れてしまいますから。愛を当たり前やと思っちゃう。俺、それ思われた瞬間に、冷めちゃうの。あ、この人、これを当たり前だと感じているんだな、って思った瞬間に、冷めちゃう。やから、俺も当たり前やと思わんように、めっちゃ気をつけてる」