高く険しいヒンドゥークシ山脈の雪解け水が流れている川を越えて家に向かうシャボナ=2006年、アフガニスタン(撮影/長倉洋海)
高く険しいヒンドゥークシ山脈の雪解け水が流れている川を越えて家に向かうシャボナ=2006年、アフガニスタン(撮影/長倉洋海)

 子どもたちの笑顔を支えているのは家族や自然のほかに、古来の伝統だったり同じ地域の仲間だったりさまざまでしたが、そうした人々を支えるものをぼくは写真の中に写し込みたいと思っています。

 いろんな場所の異なる環境のもとで、笑顔で生きている子どもたちの写真を見てどう感じますか。

「大変そう」? それとも「楽しそう」? 答えは両方じゃないかな。つらくて楽しくて、悲しくてうれしい。両極端の2つ、どちらもあるのが人生だとぼくは思うのです。

 つらいことに直面しても、それを乗り越える方法を親も先生も教えることはできません。国とか社会だって「これだ」という生き方を与えてくれることはないでしょう。自分が進む道は自分で苦労しながら探していく。だからこそ、ほかの人たちと違うあなただけの人生になるんじゃないかなとぼくは思います。

 旅で、行ったこともない場所に行き、知らない人と話す。いろいろな発見をし、たくさんのことを学ぶ。そんな経験を重ねるうちに日本の良いところ、悪いところも見えるようになりました。いろいろあっても、ぼくはやっぱり日本が好きです。ぼくはここで生まれ、これからもここで暮らしたいと思っています。若かったころよりもずっと日本を大切に思えるようになりました。

 ぼくは好きな写真で生きていくと決めてから、苦しくても写真の道は絶対にあきらめないぞと思ってやってきました。あなたも自分が好きなこと、進みたい道を見つけたいと思っているなら、ちょっと冒険をして、知らない世界に一歩踏み込んでみたらどうだろうか。

 世界でいろいろな友だちをつくりたいと思っているなら、自分の殻に閉じこもらず、自分の心をまず開いて、出会った相手に「やあ、元気?」と声をかけてみたらどうだろう。

 パソコンやスマートフォンを使い、インターネットで知ったり見たりできることもたくさんあると思うけれど、実際に人と会って、思ってもいなかったようなことを経験して驚いたり、泣いたり、笑ったり、飛び跳ねるほど大喜びすること。それがあなたをもっと大きく、魅力的に、そして楽しい人間にしてくれるんじゃないかな。

 新しい「あなた」に出会うために、世界に飛び出してみよう。世界はとても広く美しいのだから。それがぼくからのメッセージです。

こちらの記事もおすすめ 難民キャンプの疲れ切った少女が一瞬、微笑んだのはなぜ…写真家・長倉洋海が子どもを撮り始めたきっかけは?
[AERA最新号はこちら]