2本のノルディックポールを使って歩く。下半身の負担を軽減しながら上半身を効率的に動かす(写真:「100歳までウォーキング」提供)
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 万歩計(歩数計)が世に出て、半世紀以上がたつ。若者にも広がる昨今のウォーキングブームも相まって、これまで多くの人が「1日1万歩」をひとつの目安に歩いてきたが、健康になる人もいれば、がんばりすぎてしまう人もいるようだ。AERA2023年9月18日号より。

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 埼玉県に住む鈴木直美さん(56)は、50歳を過ぎた頃から悪玉コレステロールの数値が少しずつ上がってきたのを機にウォーキングを始めた。

 週に3、4回、自宅近くの土手を1万歩。しかし1年ぐらいで左ひざが痛くなった。整形外科医に診てもらうと、変形性膝(ひざ)関節症だった。

「膝関節内にヒアルロン酸注射をしてもらうと痛みは治まりますが、それ以来、歩数を減らすようにしました。今は1日6千~7千歩。痛みが出れば炎症を抑える軟膏(なんこう)を塗っています。もう無理して1万歩を歩こうとは思っていません。歩く時は背筋を伸ばして歩幅を少し大きめに。これを意識して、細々と無理せず続けようと思っています」

 都内に住む医療従事者の女性(64)は歩きすぎて股関節を痛め、近く手術する予定だ。

「健康に良いと思って続けていたウォーキングで、まさか人工関節の手術を受けることになるとは」と嘆く。

 雨の日も雪の日も1万歩を欠かさなかった。大雨の時は車で近所のショッピングセンターへ行き、屋内の駐車場を何周もした。これを2年近く続けた。日課は寝る前の万歩計チェック。「9800とかだったら、気になって眠れなかった」

 外に出て残り歩数を歩いた。

「1万歩と決めたら絶対死守です。決めたことはやり通さないと気が済まない。パチンコだって道場に通ってパチプロを目指そうとしたし、ゴルフだってプロ並みに究めました」

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