この罪責感が米国内に反核の流れを作り出すことを懸念したスティムソン元陸軍長官は1947年に「原爆投下によって100万人の米兵の生命が救われた」という声明を発表した。この声明には何の統計的根拠もなかったが、米国民はこれに飛びついた。原爆投下に疚(やま)しさを覚える必要がないということが以後米国民の公式見解になった。
これもある種の歴史修正である。一度ついた嘘は最後までつき通さなければならない。米国民が「原爆なんてただの大きな爆弾だ」という「物語」を以後服用し続けているのはおそらくそのせいである。抑圧されたものは症状として回帰する。
※AERA 2023年9月18日号