それだけではない。そもそも当初の設計案は巨大すぎ、奇抜すぎるという意見も多い。設計を担当したザハ・ハディッド氏は、建設界のノーベル賞と言われるブリッカー賞を受賞しているが、一方で「アンビルド(建設できない)の女王」という異名を持つ。その奇抜なデザインは、批判されることも多く、そのデザインと施設の巨大さから、建設費が莫大なものになると試算されている。

 当初、新国立競技場の建築費は約1300億円と見込まれていたが、ハディット氏のデザインでは、3000億円はかかるとされ、東京オリンピック開催が決定したその年のうちに、競技場の規模を大幅に縮小、建設費を1800億円以下に抑える計画を発表している。それでも細部の設計は終わっておらず、「さら地になってからでも細部の設計は変更できる」という声さえも聞かれる。

 そして問題は、これだけの巨大スタジアムをどうやって維持していくかだ。年間維持費だけでも35億円はかかると考えられている。当然、スポーツによる使用だけでは維持できず、音楽イベントをはじめとする多角的な活用が必要だが、そのためには全天候型の屋根があったほうがいい。しかし、この屋根が建築費を押しあげているのも事実なのだ。当初の建築費を抑えて、将来的な用途を制限してしまうのか、それとも巨額の建築費を受け入れて用途拡大を図り維持費を確保するのか。いずれにせよ、ギャンブルめいた雰囲気がただよう。

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